これは非常によく聞かれる質問です。
小児急性中耳炎の診療ガイドラインにあるように、重症例や鼓膜膨隆が強く耳痛・発熱が高度の例では鼓膜切開は推奨されます。つまり他の病気と同じように抗生剤の内服などの低侵襲な治療で効果が乏しいような場合には外科的な治療が必要ということです。
鼓膜切開を行うことで抗生物質のみで治療を行った患者群と比較して治りが良かったという報告が多くみられ、最近は抗生物質が効きにくい細菌による中耳炎も起こってきていることから、治療の選択肢として非常に重要と考えます。
とはいってもやはり患者本人、保護者の希望に十分配慮する必要があり、無理に行うことはできません。
また、耳鼻咽喉科医のようにきちんと処置ができる医師が当然行う必要があります。
両親の中には子供がかわいそうと言って鼓膜切開を是が非でもしたくないとおっしゃられる方もいますが、結果中耳炎が長引いて慢性的な中耳炎へ移行しなかなか治らないといったこともあり、患児によっては害よりも益のほうが大きい場合もありますので、メリット・デメリットの説明を十分聞かれた上で治療をご検討ください。
また、このような背景から医師側でも患児やご両親から嫌われるのを恐れて鼓膜切開自体を行うことを避ける傾向のある医師もあり、医師によって対応が異なる場合もあります。
この際に鼓膜切開を勧めた医師は誤診していると思い込まれるケースもあり、決してそうではないのだということをここで述べておきたいと思います。
以上“鼓膜切開は子供の中耳炎に対して必要か?”ということについて述べました。