お花やトイレ、コーヒーのにおいなど日常生活でこれまでにおっていたものが、においがしないことに気付いた場合、耳鼻咽喉科に受診されることをお勧めします。
鼻のにおいがしないことを嗅覚障害と言います。
嗅覚障害は新型コロナウイルス感染症の症状としてあらわれることがあり有名になりましたが、耳鼻咽喉科では以前から風邪症状の後に嗅覚障害が起こる患者さんをしばしば診ることがありました。
新型コロナウイルスに限らず風邪のウイルスで嗅覚障害起こることがあります。
これはウイルスが直接センサー細胞を傷害して発症するとされています。
鼻が通っているのににおいがしないウイルス性の嗅覚障害の治療では、漢方薬(当帰芍薬散)が主に使われます。その他では嗅覚刺激法と言って強いにおいのするもの(アロマや香水など)を毎日嗅ぐことによって嗅覚神経を刺激し再生を促すという方法もあります。
このウイルス性よりも嗅覚障害の原因として最も多いのは、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などによるものです。
鼻の視診やレントゲン写真、CT検査などを行い診断します。
これらの病気は鼻づまりや鼻水などのため鼻の気流が悪くなるために起こります。
この場合は副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎に対する治療を行います。
抗生物質や抗アレルギー薬、ステロイド点鼻薬などです。
なかなか良くならない場合は手術を行います。
鼻の通りをよくする事で嗅覚が戻ってきます。
耳鼻咽喉科に来院する嗅覚障害の大多数はこの原因です。
まれに鼻の腫瘍があることで鼻の通りが悪くなり嗅覚障害が起こることもあります。
この場合も専門の医療機関で治療を行います。
アリナミンテストといって、ビタミン剤であるアリナミンを静脈から注射することでにおいがするかどうか、持続時間はどうかということを測る検査があり、これにより嗅覚の神経がどの程度生き残っているかを判断できます。
これでにおいが全くしない場合、回復する可能性は非常に低いです。
上記2つ(鼻の通りが悪くなる嗅覚障害、ウイルスによる神経障害による嗅覚障害)についで多いのが、中枢性(脳による)の嗅覚障害で、頭部外傷や脳腫瘍、パーキンソン病、アルツハイマー病などがあります。
これはそれぞれの治療を行います。
また、稀な病気として先天性の嗅覚障害があります。
先天性ではカルマン症候群と呼ばれる性腺機能不全を併発して第二次性徴があらわれない病気があります。
この場合の嗅覚障害は有効な治療がなく回復は困難ですが、性腺機能不全については治療で治りますので適切な時期に専門機関での精密検査を受けてください。
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