今回は“発声の仕組み”について説明します。
発声は首ののど仏のところにある喉頭というところで起こっています。
首のところに喉頭があり、その中に声帯があります。
喉頭はその下側で気管に繋がり肺に繋がっていきます。
喉頭は発声器官でありますが、呼吸や食事の飲み込み、つまり嚥下にも関わっています。
発声の仕組みを理解する上では次の3つに分けて整理すると理解しやすいです。
- 肺から吐く息
- 声帯の振動
- のど・口・鼻の中での共鳴
肺から吐く息が声帯で振動してのどやくち、鼻の中で共鳴して声になるという手順です。
ここでは特に1番の肺から吐く息と2番の声帯の振動について述べたいと思います。
まず声は肺から吐く息、つまり呼気がないと音になりません。
管楽器などと一緒ですね。
空気を鼻や口から取り込んで、肺を風船の様に膨らませます。
その後十分に膨らんだら肺を縮めて空気を送り出します。
この空気は気管に送り出されます。
肺は肋骨や横隔膜で覆われる胸郭と言われる部分に入っていて、横隔膜や肋骨の間の肋間筋などを使って肺を縮めたり膨らませたりします。
腹式を意識した発声の場合、息を吸ったときに横隔膜が下がって平坦となり、肺にたくさんの空気が入っておなかの内臓もおされ、おなかが前の方に膨らみます。
おなかの部分を意識することで腹式発声ができ、たくさんの空気を肺に取り込むことができ、大きな声や息の長い声が出る要因となります。
次に、声帯の振動について見ていきます。
声帯の振動は、管楽器でいうところのリードの役割をしており、実際に声が出るのはこの部分です。
我々耳鼻咽喉科医は声帯を見るときに、口の中をのぞいても見えませんので、喉頭内視鏡というものを使って首のところにある声帯を確認します。
内視鏡でみると、写真の様に成り、Vの時のようになっている部分が声帯で、声を出すときに閉じます。
声帯の後ろの方には下咽頭といって食道の入り口があります。
声帯はただ閉じるだけではなく、閉じた後も遊離縁といって声帯の端っこで閉じたり開いたりを1秒間に100回から200回繰り返して空気を遮ることにより音を出しています。
わかりやすくいいますと唇を合わせてプルルと音を出すのと同じということです。
声帯は3層構造になっていて、土台のボディーは筋肉でできており、その上を移行部として靱帯が覆っており、さらにその表面を粘膜上皮であるカバーが覆っています。
普通の声であれば靱帯までを傷つけることなく、カバーの部分まで手術で少々とっても発声には問題ありませんが、歌を歌う、歌唱となると、なるべくカバーを傷つけないといった配慮が必要になります。
このような事を頭に入れながら私たちは治療を行っています。
ボディーである筋肉は声帯の土台ですが、手足の筋肉と同様に使わなければやせてきます。また、加齢によってもやせてきます。
ですからなるべく歌を歌ったりすることでつかうことは声を悪くしないために重要です。
また、喉頭は飲み込み、嚥下にも関わり、嚥下機能を低下させないためにも発声を続けることは重要です。
カラオケやコーラスなど声を出す趣味を持つことは良いことだと考えられます。
以上今回は発声の仕組みについて説明しました。
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